黄金の檻

まだまだベテランなどと言えるレベルではありませんが、それなりの時間を塾長として過ごした者として、勉強が苦手な子どもの共通点がかなり見えてきました。

 

勉強でもスポーツでもその他の趣味などでもそうなのですが、上達しないためのいちばんのコツがあるとしたら、それは「努力をしない」ということでしょう。

努力をしなければ勉強だろうが何だろうが得意になることは基本的にはありません。天才として生まれていれば努力など不要なんだろうと思いますが、そうだとしたところで今からどうにかできることではない以上、それは考えるだけ無駄なことです。

 

努力をせずに逃げ続けてきたという負の遺産の積み重ねが、苦手の壁を更に強固なものにしてしまうため、逃げてきた期間が長ければ長いほど、努力への第一歩は重く険しいものとなってしまいます。

そのため、勉強が苦手な子どもの多くは、少しでも耳の痛いことを言う人間からすぐに逃げだそうとします。逃げることによってまた…という悪循環の完成です。

 

まずはその悪癖をなくすための努力から始めるべきなのですが、ではなぜそのような癖がついてしまったのか、ということから考えてみましょう。

 

努力をしない最大の理由は、周りの大人が甘やかしているからです。

何もしなければ周りの大人が何でもしてくれるから、自分から何かをすることに価値が感じられないのだと思います。

 

できないことを代わりにやってあげるのならいいのですが、できることまで全部やってしまうことで子供の成長は大きく阻害されます。

甘えさせてあげるのと甘やかすのは、まったく別のことだと理解するべきです。

甘やかせば甘やかすほど、子どもの自立は遠くなります。

 

勉強というのはすべて自立のためのプロセスですので、甘やかすことと勉強の相性はとても悪く、両立は不可能だと考えた方が無難です。 

一部の親子に見られるような、「ママの小さな恋人」みたいな関係は、子どもの未来を叩き潰すためのもっとも有効な虐待方法だと思ってください。

 

以前、中学3年生の子のお母さんから「私が仕事から帰るまでは家にいさせるので遅くなります」というようなことを言われたことがあります。ご家族に介護などが必要な方がいるのかと確認すると、そんなことはないとの返答。

私が帰らないとご飯が食べられないじゃないですか、ということだったのですが、今思い出してもよく意味が分かりません。

中3にもなれば自分で食事を作ることぐらい誰でもできるはずです。

 

自分でできることを増やしてあげることこそが本当の子育てで、何もできないまま体だけ大きくしようとするから勉強も何もできなくなるんだと、どうして気づかないんでしょうか。ペットを飼うのと子どもを育てるのはまったく別のことです。


何でもやらせてみて、上手くできれば一緒に喜んで、上手くいかなければ手伝ってあげる。それでいいじゃないですか。意地でも成長の邪魔をしないと気が済まないわけじゃないですよね。

 

成長と自立を阻害する黄金の檻の中で、多くの子どもたちが苦しんでいます。

親子といえど、親と子は別の人間です。過干渉や過保護はやめにして、子どもの人生を尊重してあげること。それが自立への第一歩であり、成績を上げるための第一歩です。

 

まずは親が正しい選択をすること。

甘やかして何もできないようにするか、しっかり厳しく育てることで自分の力で何にでも挑戦できるようにするか。

迷う必要はどこにもありません。